Geoff Lawtonとパーマカルチャーツアー(ヨルダン・りん)

Farm Report Vol. 6 Greening the Desert Project with Geoff Lawton in Jordan

 

Farm Report Vol.1で紹介したGreening the Desert Projectのサイトに、Geoff Lawtonが来訪。彼はパーマカルチャーの祖であるBill Mollisonから直接指導を受けた人物だ。

まさかヨルダン留学が終わる頃に彼に会えるなんて…巡りあわせってすごい。

パーマカルチャーの技法については以下の記事で紹介しているので、この記事ではこのプロジェクトの簡単な歴史とパーマカルチャーの考え方、資源の分配問題について触れたい。

 

b-girls.hatenablog.com

 

The man in the blue shirt is Geoff

 

 

どうやってはじめたか?

10年以上前、現地の女性Nadiaとパーマカルチャーを指導するGeoffは、ヨルダン西部の何もない土地を購入。最初は、文字通り何もなかったという。資金も、協力する人も、緑もなかったが、地道に続けることで今やヨルダンの農業省の人や、世界中の人々がコースを受講するためにこの地を訪問するまでになった。

壁をつくらない!

はじめは、壁をつくらずに作業していたという。通りすがりの人が、何やってるんだろう?と興味を持ってもらいやすいための工夫だとか。地元の人が本当に興味を示してきたのははじめてから5年後というから継続ってすごい。外国からの支援にも助けられている。LushMuslim Aid Australiaなど、資金提供してくれる企業・団体が現れ、徐々にファームが形になっていった。

around the project site



水がない、本当に?

人が多ければ多いほど水の使用量は増えるので、水資源が限定的な場所では不足となってしまう。ヨルダンでも人口増加による水不足は国の課題の一つとして挙げられている。しかし、Geoffは人が多くても有効活用できる水は十分あるという。そしてそれは「デザイン」の問題だという。

例えばキッチン、洗濯、シャワー、トイレなど、日常生活で水の使用は欠かせない。そこで使われる水は蛇口をひねると出てきて、そのまま下水道を通るのが一般的だろう。しかしそれは一つのデザインにすぎない。つまり、他のデザインだって考えられる。その水を自然の力を利用して浄化し、農業用水のポンプに繋げるというデザイン。こういう工夫がパーマカルチャーの知恵としてあるのだ。

要するに、水資源が不足している地域であっても、デザイン次第でそれがもはや問題にならない…という世界が可能になる。

 

具体的には、ウィッキングベッド(最小限の水で作物が育つシステム)やリードベッド(葦を利用した浄化システム)などをデザインできる。

*これらの詳細は、前の記事で紹介しています🙌

wicking bed

水だけでなく、電気の節約も可能だ。例えば排水時にスウェイル(地面の高さを低くすることで水が自然と流れるようにするシステム。古代ナバテア人が得意とした)を活用できる。

swale

このように問題となっていることもデザインで変えてしまうのがパーマカルチャーの面白さだ。パーマカルチャーの考え方であるProblem is solutionという言葉が体現している。

 

不平等な資源分配

一見これらは、資源不足の地域に限った話に思えるかもしれない。でも私は全世界に共通して重要な知恵だと思う。なぜなら、たとえある地域で資源が豊富にあるように思えても、それはグローバルに見れば不平等な資源分配によって成り立っているだけかもしれないからだ。グローバルノースの暮らしを全世界の人が取り入れたら、地球温暖化ガスの過剰排出によって地球が何個あっても足りないという(参考:carbon footprint)。軍事侵攻で肥沃な土地をまず獲得しようとするのもよくある話。

不平等の責任は、自分がその原因をつくった張本人でなくても、利する立場の人にあると考えている。もちろん文化圏や趣味嗜好によって資源の使用具合に違いはあるから、それを平等にしようとは思わない。そうではなくて、誰もが不自由のない範囲で生活できるような公正さを探究していくべきだ。資源の公正な分配をかなえる一歩として、環境負荷の少ない方法での生活が実践できると思う。そのヒントを提供するのがパーマカルチャーだ。

 

いろいろ書いたけど、単純な面白さからでも、問題意識からでも、パーマカルチャーに興味を持つ人が増えたらいいな、一緒に話してみたいな、と思う。

(りん)