キブツからみるイスラエルの農業と生活(りん)
Farm Report vol. 8 Kibbuts Naan in Israel
*ヨルダン編は終了し、今回からイスラエル/パレスチナの農業事情になります🌱
今回、イスラエルの友人からキブツ出身の人を紹介してもらい、そのキブツを案内していただいた。
キブツとは?
すべての資産、生産、消費、育児などを共同化するという一種のコミューン組織。帝政ロシアの迫害から逃亡してきたユダヤ人たちが、パレスチナのガラリア湖畔に共同体を作ったことがはじまりだという。
近年、一部のキブツは民営化されており、共同化にはグラデーションが生じてきている。当初は農業を主体とした共同体であったが、多様な事業を行う産業集団となっている。キブツ内に工場があるところも多い。
ロケーション
Naanの人口は500人ほど。テルアビブから南東部に車で40分程で到着する(ちなみにパレスチナ自治区のラマッラからまっすぐ西へ行くと1時間ほどで着くが、ボーダーが解放されないと一般人には無理なルートだ…)。
生活
キブツ内の建物は低く、最大でも2階建て。走り回れそうな広い草原もある。
郵便局
ポストは各家に置かれていない。代わりに毎日郵便局に行き、郵便物があれば取りに来るという。小規模なコミュニティだからできることだろう。
共有ダイニングルーム
週末にコミュニティのメンバーが集まって食事をする場所。初期キブツでは、それぞれの家にダイニングルームはなかったため、このような共有の場所で食事をしていた。しかし現在は個人主義化も進み、各家にダイニングルームがあるため、ここに来る人は少ないそう。
どうやらバーもある。
共有洗濯機
キブツには共有の洗濯機が設置されている。コインランドリーみたいなイメージだろうか。
キブツで育つ子供たち
子供たちは子供たちだけの家で過ごす。教師はいるが、生みの親は子育てをしない。子どももキブツで共有されているからである。子供たちはみんなが同じデザインのシャツを着るそうだ。16-18歳になると、1人で暮らすようになる。イスラエルには兵役があり、兵役とともにキブツ出身の若者はキブツを離れることが多いが、結婚とともに戻ってくるケースが多いそう。
産業
このキブツ内では、電子レンジ部品の作成の工場や、アボカドなどの農産物、乳牛の生産が主産業である。
なおイスラエルの食料自給率は非常に高く、パレスチナをはじめ輸出がされている。日本でもスーパーでオレンジやグレープフルーツを探すと、大体イスラエル産だ。農作物は4割ほどがキブツで生産されている。
工場
工場での労働者はキブツ居住者のみならず、アラブ人を含めたキブツ外の人でも構成されている(イスラエルの市民権を持つアラブ人はIsraeli-Arab、48-Arabと呼ばれる。1948年戦争で他地域に避難せず残っているパレスチナ人のことだとされる)。
乳牛
280頭の牛がいる。1頭当たり1回で15-30Lの乳が搾れる。
牛の体には電子機器がとりつけられており、各牛の年齢、病気の経歴、妊娠した日、搾乳した日が記録されている。牛肉のトレーサビリティ管理の一環だろうか。
搾乳したものは、乳牛会社に送り利益を得るか、他のキブツと物々交換をするそう。物々交換では、牛乳を渡す代わりに牛の餌になる藁を獲得するそうだ。前者に関してはやはりこのキブツも近代化されてきていることがわかる。
以上キブツNaanの概観を紹介した。数時間の滞在であったため踏み込んだ話はできなかったが、キブツが近代化されてきていること・イスラエルの産業にも重要な位置を占めていることはなんとなくわかった。
なお、途中気になったこと。トイレ掃除の仕事はcoloredが多い気がする。空港などテルアビブでは、アフリカ系、アジア系の人が清掃員であるのをよく見かけた。多様なバックグラウンドを持つユダヤ人が多く居住する中、すみわけがされているかなど気になることがけっこうあった(ちゃんと調べたらここに付け加えて書きます💦)。
(りん)